説明
オーナー醸造家のクリスチャン・チダは、実験的な醸造に積極的なオーストリアの醸造界の中でも異端児と呼びたくなる存在。醸造学校へ通ったこともなく、ワイン造りは祖父と父、そしてロワールとブルゴーニュの生産者達から独学で学んだというが、モットーは「レッセ・フェール」。放置して、自ずから調和に至らせる自由放任主義だ。亜硫酸は添加しないか、してもごく微量。そしてノンフィルターで瓶詰めする。
イルミッツのごくなだらかな土地に数haの畑を所有するが、12haのブドウ畑をライタベルクのより標高の高いエリアに所有している。30近い点在する区画では栽培しているのは白はショイレーベ、ピノ・ブラン、グリューナー・ヴェルトリーナー、ミュスカ、赤はツヴァイゲルト、ブラウフレンキッシュ、カベルネ・フラン、シラー。「地上の楽園」Himmel auf Erdenの自由奔放さ、グリューナー・ヴェルトリーナーをマセレーションした「ノン・トラディション・ヴァイス」の底知れないスケールの大きさ、「ノン・トラディション・ロート」のカベルネフランの端正で繊細な深み。彼の造るワインは、いずれもが独自の世界を構築している。
15haのブドウ畑は、すべてライタベルクの斜面にある。斜面にあることが重要で、地元では「水面の見えるところにあるブドウ畑から良いワインが出来る」と言っている。斜面の上部は雲母片岩(グリマーシーファー)で、下側は石灰質。いたるところに石英の塊が混じっている。斜面の背後の山からは冷気が吹き降ろすので、日中の気温が36℃になっても夜間には6℃まで下がる。この気温差がアロマを育てる。また、斜面の下は湖面に反射した太陽光の恩恵も受ける。雲母片岩は熱を吸収する暖かい岩石で、石灰岩は冷たい。この、斜面上部の岩石からの暖気と森からの冷気、斜面下部の岩石の冷気と湖から暖気という、温と冷の組み合わせが良いブドウをつくる。


 


